19人が本棚に入れています
本棚に追加
「有純ちゃん」
「!」
所在なげに彼の背中を見送る有純に、後ろから声をかけてきた人物がいた。今年から同じクラスになった友人、長谷川美桜と相田夢の二人である。
「あのさ、夏騎君と有純ちゃんって、幼馴染なんだよね?」
「?そーだけど……」
「じゃあ、夏騎君の去年のクラス……四年三組についても、ある程度聴いてる?」
美桜も夢も、去年のクラスは三組ではなかったはずである。美桜は二組、夢は四組だ。ただ、夢の方は四組ということは、教室も同じ階で隣。何か知っているのかもしれない。
「いじめがあったことと、夏騎とそれ以外にも不登校があったってこと。あと、一人クラスの子が自殺しちゃったってことだけは知ってるけど、それ以外は。お前ら、何か知ってるのか?」
焦っている、という自覚は有純にもある。なるべくきつい口調にならないよう、精一杯自制しなければならなかった。有純の言葉に、美桜と夢は顔を見合わせ――ちょっとだけ、と頷きあった。
「私の友達、三組だったの。……でも、その子もちょっとおかしくなっちゃってて。あんまり話は聞けなかったんだけど……」
少しためらいがちに、夢が口を開いた。
「その子の遺書が、あったんだって。でもその遺書が……ちょっと奇妙なものらしいの」
最初のコメントを投稿しよう!