打ち上げ花火

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「恵那っ!」 もう一度誰かに呼ばれたけど、それが隣にいる樹じゃないことは分かっていた。 だからもう少し、花火の音で聞こえない気付かないふりをして彼とこうしていたかった。 だから来たくなかったのに。 もう一度会うと今度こそ何もかも捨てて樹のところに飛び込んでしまいそうだったから。 その年の観客数が過去最高の108万人だったと後から知って、廣祐と別れて婚約破棄をした。 廣祐に散々罵られ両親に咎められた後、会社を辞めて駅のホームへ立った。 これから会いに行く樹の左手の薬指に指輪がはめられていることを私はまだ知らない。 fin.
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