440人が本棚に入れています
本棚に追加
────
──
「うわぁ、あたし絶対に嫌。もう触られたくない」
沙保は、鳥肌でも立ったかのように、腕をクロスしてさする。
「ええ、なんでぇ。私、ずっとくっついてたい。もう、物凄い好き」
真由は堂々と言った。
二人は夫に対する感情を各々に表現している。
「……」
「「紗季 は?」」
両極端な二人がどっち派か真剣な目を向ける
「いや、何か……微妙。久しぶりに二人になったら、困った。何喋っていいか」
「ああ、そこか」
どこ?
「喋らなくていいよ、くっつくの。折角の二人~」
真由はまだ子どもが小さいので、子どもが寝た後しか二人の時間がないと不満を漏らした。
「私、出掛けるわ。ヤダヤダ」
沙保は、あんなに熱烈に追いかけてた旦那さんと産後こんな感じだ。だけど、二人目は欲しいという矛盾に悩んでた。
「なによー、二人とも、旦那さんイケメンなのに!」
真由がそう言った。
「だってさぁ。つもり積もって、不満しかないわ」
そう、出産後の夫の行動でその後は大きく変わる。
「あ、これ、いいよ」
真由が、勿体ぶってそう言った。
「どれ?」
「唐突に聞くの」
「なんて?」
「必ず、二人の時ね」
「だから、何よ」
「“私のこと、好き?”」
「はい、無理」
「……私も」
「無理でしょ? 向こうも無理なんだよ。だからこそ、打破出来る。言えたら、何かが変わる」
「何言ってんだって言われるわ」
「そこじゃ無いのよ。向こうもね、動揺するでしょ。それが、狙い」
「あー、そう」
「へー、そう」
「だいたいね、夫婦なんて、エッチしなけりゃ、男と女にならないでしょ?」
「そこくらいってこと?」
「そ、説明しづらいんだけどね、何となく上手くいくのよ。肌のコミュニケーションがあると」
無いわけじゃ、無いんだけどな。でも、改めてってなると……考えただけで、緊張するわ。どうして自分の夫にわざわざ緊張しなきゃなんないの。
試してみる気は、更々ない。私の事好き?なんて、恋人時代でも聞いた事ないわ。
……あ、違う、聞かなくても分かった。あの頃は。
最初のコメントを投稿しよう!