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ズルいと思う。女は、否応なしに変わらないといけないっていうのに 男は何も変化せずに父親になれる。 休日に子供を少し公園でも連れていけば いいお父さんねー、なんて。子供を見る労力なんて大したことはない。子供を見るだけでいいんだから。 何が大変って、子供を見ながらの食事の用意に家事に全般、それに学校行事。スポット的にやってくる予期せぬトラブル、体調不良。子供経由の人間関係。同時にあれこれこなさなきゃならない、女は。 そして、それは古くから伝わる呪いの言葉「母親なんだから」で、済まされる。 古くからの母親たちと違うのは、今の母親は妻として、社会人として綺麗でいることも求められる。気づけば、流行りの服も、メイクの仕方も分からないというのに。 気づけば、こんな年。劣化だ、なんだって言われる。男はいつでも素顔の洗いざらし。 こっちはメイクして無ければ女を捨ててるだなんて言われる。 捨てたのは、女じゃなくて「自分の時間」 なのに、ズルい。男は。 結婚してても、年をとっても、渋さが増して……そこが良いなんて、言われたりする。 年上好きの若い子だって、少なくない。別に若い男性に恋愛対象に見てほしいわけじゃない。ただ、どこにぶつけていいか分からない理不尽に文句を言いたくなっただけ。 ──拓真は元々モテるタイプだった。だけど、本人は興味が無かったもんで、そんな事は気にしていなかった。大学生らしい浮わついたところもなく、私と恋に落ち、そのまま結婚した。その大学で培った物が、芽を出し、男の価値を押し上げた。男の魅力が全開になった今……モテ期到来。いや、元々モテてたんだけど。 以前と違うのは、自分の魅力を彼が自覚し、モテていることにも気付いている事だ。 遅咲き。若い頃に十分に遊んでいなかった男は……遊び方を知らない。拓真は遊ぶタイプではなかったけれど。遊びが…いつしか、本気になるのでは。ふと、そんな不安が頭を過った。それほどに今、拓真は魅力的だ。 ただ、しばらく、そのことに全く気付けていなかった。
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