第四話 伯爵とエッグの仲間

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第四話 伯爵とエッグの仲間

 俺は顔を洗って歯を磨いた。 姉ちゃんは乱れた髪を直して、エッグの髪もすいてやった。  応接室の前には、そういえば、彼の名前聞いてなかったな。この家で初めて会った男。 「あの、君、なんていうの?」 「私なぞ」 「早く教えて」 「グリンです」 「グリン、ありがとう、食べすぎ注意だよ」 は?というような顔で、扉を開けてくれた。 そこには、白髪頭の紳士がいた。 「初めまして、マーサと申します」 「ポデットです」 「シュトラウドと申します」 握手をした。 彼の頭の後ろから小さな人が顔を出した。僕の指の大きさほどしかないけどエッグとは違う。 あ、また、男の子?首の周りの髪の毛が動くたび顔を出してる。 「なにかいるよ?」 「あの、この子たちは?」 「この子たち?そうですか、お見えになる。この子達は、王家の守り神です」 「守り神?」 「俺たち神様か?」 「何でもいいだろ?」 「そうそう、なんでもいいの」 三匹もいる?あれ?羽が生えてる、エッグはないのに。 「まだエッグには羽はないよ?」 「なぜ?」 「だって、まだ母親のところじゃないもの」 一匹が言った。 母親? 「ハハハ、土です、大地は、この子たちバラの妖精にとっては母親なんですよ」 「どうすればいいの?」 「それはお前、ポトがよく知ってる」 一匹の妖精が言った。 「俺のあだ名」 フェンディ―がよく言ってただろ、みんな知ってるよ。 「みんな?」 「外を見て、みんな仲間よ」 妖精が僕たちを引っ張りテラスに出た。 「ウワー、凄い」 「見事ね、いろんなバラがあるわ」 バラだけじゃない、いっぱいふわふわ飛んでる。それにいろんな声がする。 あ、鳥だ。 「ねえさん鳥だよ、こんにちわ」 「ほんとうね」 「母さん、あの子」 「あんなの相手にしちゃダメ、帰るよ」 「あーあ、嫌われちゃったな」 「お前、声が聞こえたのか?」 「声?」 「鳥だよ、鳥!」 首を傾げた、鳥だけじゃないけどいろいろ聞こえるよと話したら三匹はすごいというような顔をしたけどすぐに表情が曇り、三匹の妖精はシュントした。 「どうかしたの?」 俺の肩や姉さん、シュトラウドさんの頭に止まって云う。 「元気がないんだ」 「アイツだよ、まったく、バラが大嫌いなんだ」 「匂いが嫌だから、屋敷ごとバラを焼き払えって言うんだ、あったまきちゃう」 あいつだね? 「あいつだよね」 エッグと笑って見せた。 「おや、おや、これは小さなお友達だ、お名前は?」 俺の肩にいたエッグのほうを覗き込んだ伯爵。 「エッグといいます」 「エッグか、よろしくな」 伯爵が言うと、エッグは俺の髪の毛の中に隠れてしまった。 「ポト、助けてくれ」 「お願いだ、君しかいないんだ」 「お願い」 三匹は俺の服や手の指を握って頼むというけど。 「わ、わかった、まず、シュトラウドさんに話が聞きたいんだ、いいかな」 いいよという、もう、話は終わったも同じだよなという。 もういいんかい、と突っ込みたくなった。 お茶を持って、クラウドが入ってきた。 僕の髪の毛を引っ張るエッグ。 「ああ、お茶か、クラウドさん」 「クラウドとおよびください」 僕は、ミルク入れを四つと、僕のコートのポケットに入っている紙の包みを持ってきてほしいと頼んだ。 「すぐにお持ちします」 「お茶は僕がするよ」 ではお願いしますと言って出て行った。 僕はその後を追い、ドアの隙間から人がいないかを見た。 「姉さん早く」 「すみません、先に聞かせてください、私達はあの方たちに殺されるんでしょうか?」 「なぜそう思われる」 「父と母が殺されました、殺された、違うわ、殺されそうになったんです、今は生きているのか死んでいるのかさえ分かりません。それは追手に見つかったからだと祖父は書き残してくれました。何故追手にわかったのか、どうして、祖父だけが生き延びたのか、教えてください」 俺は、誰も来ないかドアを少し開けてうかがっていた。 「ながい話になりますが、先に言っておきましょう、このままでは殺されてしまうやもしれません、ですがあのもの、いやこの屋敷に仕えるものは、なにもしないでしょう。するとすれば外の物と言っておきます。ポデット様がバラを元気にさえすれば、必ず応えてくれます、あなた方お二人を守るため」 「ながい話は」 「それは・・・」 「姉ちゃんきた!」 「それはまたゆっくりと」 「お願いできますか?」 「ええ、ただひとつお願いがございます」 「なんでも言ってください」 「この子たちを預かってはくれませんか?」 「それでいいのですか?」 「ええ、この子たちは王家の物と関係を持っている物しか見えないのです」 「え?関係ですか?」 そこまで来た。 俺は静かにドアを閉め、ポットのお茶を入れ、ふるまった。 ちょっと濃かったけど、いいだろう。 「旦那様、これでよろしいでしょうか」 「ありがとう」 その紙からは、ローズのいい香りがしていた。 みんなが俺にあつまってきた。 「すげー」 「お前が作ったのか?」 「いい匂い」 残った紅茶に入れてくる、くる、ふたを又開けると一気に香りが部屋に広がった。 ぽん!ぽぽぽん! 「う、ウワー」 体を叩いて驚いている。 「んー」 背伸びをした。 「でっかくなったぞ」 グラスに自分をうつしてみている。 三匹がグラスほどの大きさになった。腰を抜かし尻もちをついたクラウドさん。 「これは、これは、本来この子たちはこの大きさだったようですな」 「クラウドさん大丈夫?」 「ちょっと驚きました」 「ポトー早く!」 「早くくれ」 「私にも」 「俺大盛り!」 ミルク入れの中に注ぐとみんなが手を伸ばし飲み始めた。この子たちにもちょっと大きいがそれでもエッグが彼らより小さいのが余計にわかってしまう。 おいしい、うまいの声に、姉ちゃんと笑っていたんだ。
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