第四話 伯爵とエッグの仲間

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「私には姉がいてね、彼女は、ハウシュ国に嫁いでいてね、君らのおじいさんとは仲が良かったんだ」  僕たちのいたハウシュは医者の街で有名な国だった、お姉さんは医者のところにお嫁に行ったのだそうだ。 私の親は、フェンディ―を助けたかったんだ。 そこで、国から逃がすことにした、クラウドの祖父母と結託してね。 その頃、この世界では奇病がはやりはじめていたんだ、大人になると死んでしまうという病、嘘か本当かはわからないがその話に乗せたんだ、王子は二十歳で死んだ。 葬儀も盛大にした。 そして余生をハウシュ国で過ごすことになったんだ。 「私の親は、祖父母がいなくなったことに何の不思議も覚えなかった、それは厳格な曾祖父が厳しくしつけたからで、祖父母は、フェンディ―様と一緒にこの国を出たと判ったのはつい最近で。王家はギュターに乗っ取られていた、だから、わたしは・・・すみません、何も知らなくて」 「いや、君が悪いわけではない、君の代では知らないものが多いんだ、よくもここまでこの屋敷を守ってくれたよ。悪いのはギュターで、もうあそこも、縁もゆかりもないのだよ」  娘が死に、当主も早くに病気で亡くなると、もう一人の娘に婿養子できた男がいたんだ。その間にできた子供がエド王子、だが奥方もまた若くして亡くなった、その後を継ぐことになった婿養子は後妻を取った。だがな、ギュター家は皆若死にだ、45で亡くなった王の代わりがその孫の、朝に来たハインだ。 「では、今は親戚でも何でもないんですね」 「そういう事だ」 「よかったな」 「でもまだ安心はできねえぞ」 「そうそう、あふー、そろそろ寝るね」 妖精たちはどこかへ行ってしまった。エッグも連れて行ってしまった。 血のつながりは無くなったとはいえ、この国の最高主導者であることに変わりはない。 「父と母は」 たぶん妖精が見えたんだ、それをどこかでギュターに使えるものが知ったと考えるのが妥当だろう。 「見えたって?」 「たまにいるんだよ、そういうのが見える、私達一族のようなものがね」 「それが耳に入って、母たちは」 姉ちゃんは顔をふさいでしまった。 「姉ちゃん・・・」 「それだけならよかったんだがな」 「まだ何か?」 フェンディ―の子が生きているといううわさが広がり、ギュターは、国を乗っ取ろうとし彼らを抹殺しようとしたのかもしれない。 「だから母たちは逃げたのですね、私達をおじい様に預けて」 「だが、何故、フェンディ―王は知られなかったのだろう?」 「それはたぶんあの子たちが守っていたからだと思います、ただ今となっては何もわからないものになってしまったが・・・」 そういえば、銀の本、クラウドさんが姉さんにゆっくり読むように言った、こっちに来てビックリしたという。母さんの文字があちこちにいっぱい書いてあるって言ってた。 じゃあ、父さんたちが逃げたのは、俺たちを守るため、この国じゃなくて、俺たちの育った国を守るため…。 おばあちゃんもお父さんもハウシュ国の人、だから・・・ 「そうか、そういう事か」 「ポト、君は賢い、だから、ハウシュ国を守りたければ、ここに居る事だ、そしてこの国も守ってほしい、もちろん、お姉さんもね」 「・・・はい」  横で泣く姉ちゃんを慰めるのにその後だいぶ時間がいった。  その間も話は続いていて、クラウドは、二十歳になったときに、いろいろ調べたそうだ。なぜなら、クラウドの代で、この屋敷は本当になくなってしまうと思ったからだそうだ、先祖たちがずっと使えて来た屋敷、それをちゃんと整理しようと思った、でも調べていくうちにいろいろ可笑しいことに気づき始め、伯爵のお力を借りていたそうだ。 「だからあの日、グリンがいつものように昔話を読んでいて、たまたま紛れ込んで入ってきた子供の相手をしていたんだと思ったんだ、でも、あの本と、香水の機械、あれはまさしくローズ家の人間しかできないものだと確信して、伯爵においで願ったのです」  伯爵は僕たちに、時間はたっぷりあるからゆっくりと勉強していけばいいと言ってくださったが、そんなに時間はないと思った、妖精たちのお願いは、病気になってしまう前に何とかしてほしい言う願いだ。 姉さんにその話をして、明日の朝は早く起きて庭を見に行ってくると話し、その日もまたあの大きなベッドに眠るのだった。
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