第五話 国の花、クイーンレッドローズ

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第五話 国の花、クイーンレッドローズ

気持ちのいい朝だった。 起きた時、僕の頭の周りには四匹の妖精が寝ていた。 御寝坊さんだからまた眠ってしまったというのだが。クラウドが来てないということは昨日より早い時間だ。僕は一人で支度をしたんだ。 コンサバトリーに行きましょうと手を引っ張られた。 そこは、一番端のバラ園に突き出た温室のように暖かい部屋だった。 「おはよう」 昨日のシュトラウド伯爵が起きていた、挨拶をすると、グリンが、僕にコーヒーはいかがと勧めたけど、エッグが肩で、髪の毛を引っ張ったからお茶を頼んだんだ。 「よく眠れたかい?」 「はい、ぐっすりと、あのー、シュトラウドさん、お聞きしてもよろしいですか?」 「なんなりと」 と、にこっと笑われた。 エッグが生まれた日というか、バラの花が開いた日、僕はおじいさんの家からこの屋敷にまるで空を飛ぶように一瞬で来たことを話した。 「そうですか、それはすごい事ですね」 「驚かれないのですか?」 驚いていますよと彼は言った。グリンがお茶を入れる時、僕はバラを多めに入れてお茶の葉を少なくしてと頼んだんだ、その通り、香が彼の歩いた道に広がっている。 「このローズ家の当主は、何かしら魔法が使えます」 また、ご兄弟もそれなりにお力をお持ちです。そうですね、おじい様のフェンディ―は確か・・・パチンと指を鳴らした。 「思い出した、人の心が読めたはず」 そうか、そうだったんだ、知らなかった―。 「もうおじいちゃん、僕より先に思っていることを笑いながら言うんだよー、そうだったのか―、なんか悔しいなー」 ハハハと大きな声で笑われたんだ。 クラウドが入ってきて朝食の用意が出来たと呼びに来た。僕がいたのに驚いていた。 今度はちゃんと呼んでくれと言われたけど、呼び方がわからないというと、 「そういうことはちゃんと教えてくれないと困るよね、来て一日なのにな」 とシュトラウドさんに背中を押され食堂に向かう。 君は好きな場所で食べていいんだ、これからは、彼を自由に使っていいんだと言われたけど、執事ってよくわかんないし、クラウドもよくわかんないし、まだいいや。 食堂で、姉さんにおじいちゃんの話をしたら、驚いていたんだ、顔を真っ赤にして、恥ずかしいと顔を隠したんだ。 食事がすんでから応接室でシュトラウドさんからいろんなことを聞いた。 その中には嘘っ!というようなこともあった。 その一つに僕と同じ力を持った人がいたんだ、四代前だって、ということは爺ちゃんの母さんの爺ちゃん?後でまたあの絵を見に行こうっと。 そして爺ちゃんの本はこの屋敷から持って行ったもの、銀の本は姉ちゃんだけしか読めない魔法がかけてあって、それはお母さんがかけた物なんだって、だから、その魔法が解けた今、ゆっくり読むように言われたんだ。 「父さんの両親を知っていますか?」 「すまない、それはわからないのだ」 シュトラウドさんのお姉さんの家族がかろうじて知っていたんだけど、今はその病のせいでみんな死んでしまってわからないそうだ。 「では、母さんのお母さん(爺ちゃんの奥さん)はご存知ですか?」 知っているという。 おばあちゃんはハウシュ国のお医者さんの娘だった。 国を追われた彼の心を救ってくれた人だった。彼女が居なければ彼は絶望の淵から這い上がることはできなかったといわれた。 「亡くなったんですか?」 「ああ、彼女は、お母さんを生んですぐになくなったんだ、でも彼はとても幸せだったはずだ、こうして君たち孫に看取られ天に召されたんだからな」 ファンという名はおばあちゃんの家の名前だそうだ。 姉さんはハンカチで流れる涙を拭いていた。 僕は三匹の妖精のことを聞いた。お爺ちゃん、お爺ちゃんのお母さん、そのお母さんの父親。ん? 「お母さんは?」 「んー、たぶんな、お母さんの妖精は生まれなかったんじゃないかと思うんだ」 「どうしてですか?」 テラスに出ようと言われた。 昨日はあまり見れなかったけど 「ひどい」 「病気だ」 「わかるんだね、荒れていて、根を生やしたものは見てくれ」 指を指した。 東と西に屋敷がある、そこに向かって、何かからさけるように広がって行ったという。 「まるで焼かれるのを怖がるように逃げてるみたいだ」 「焼く?」 「はい、ハインという人にさんざん言われ、焼き払えと言われました」 「なんと、国の花を焼き払うとは、嘆かわしい」 「あの、この花は」 ステッキを見せた。 「これは国の花である、クイーンレッドローズ」 真っ赤な花で、この城のどこかにあると聞いてるが、見たことが無い、門外不出だという。 この城には、温室や、シークレッドガーデン、ハーブガーデンに畑もあるんだけど、広すぎて知らない所もたくさんあるというんだ。クラウドでさえ知らない所があるし、庭氏の親方も知らないだろうなと言う、どんだけ広いんだろう。 「ここから見える景色すべてが敷地なんて」 「まさか、マーサ、この三倍はあると思ってくれ」 「さ、三倍!」 「どんだけ広いんだよ」 「だから、ポデット君のその力がいるのかもな」 「そうかもね」 「でも疲れるんだ、嫌だなー」 馬に乗れるようにしないとなと言われた。 「ウマか―?」 「動物もあまり見なくなったわ」 「病は人間だけではなく動物にも広がっているのでしょうな」 「怖い病気だね」 「もしかしたら、それもあなた方が何かを見つけるかもしれませんね」 「できるでしょうか?」 「こればかりは…でも未来は、あなた方の手にかかっていますよ」 楽しそうに飛び回る妖精を見ていた。
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