第五話 国の花、クイーンレッドローズ

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僕のいる部屋は、おじいちゃんの部屋だったんだって、初めて来たときもこの部屋だった、だからかな、それを聞いたら落ち着くような気がしたのは。 腰をさすりながらの作業ははかどるわけもなかった。 三日目、どうしても欲しいものがあった、キッチンからのぞく。コックが出て行った。 「しめ、しめ」 「オホン、ご主人様、何をなさっているのですか?」 僕は、ごみ箱のふたをあわてて閉めた。振り返ると、腰に手を当て仁王立ちのコック。 僕は素直に話した、ごみがほしいと。 「肥料ですか?」 「うん、よく知ってるね」 前のコックたちはしていたそうだ、王様が変わってからはしていなかったらしいという。 外に連れ出し、温室の横に開けた大きな穴を見せた。俺には大きいけど、他の人は小さいなんて言うんだろうな。 「ウップ、これは?」 「温室で腐っていた植物を穴に入れたんだ」 そこに今もらってきたゴミを入れて、ぐちゃぐちゃとかき混ぜた。 「こんなので肥料になるのか?」 「うん、これを乾燥させればいいんだ」 もう一つ穴を掘らなきゃな、食事の後に、貰いに行ってもいいか聞くと、構わないが、動物が来て食い荒らさないようにしろと言われた。 僕は、彼にこういったんだ。 「ありがとう料理長」 すると彼は、照れたのか、頭をかきながら、手を振って行ったんだ。 「フフーン、抜け目ないもん」 爺ちゃんの家でしてたんだもんね、よし、後は蓋をしてと。 さて、やる事やっちゃおう。 「親方」 「ん?」 「あの人は?」 「ああ、何でもこの屋敷の跡取りだそうだ、俺は知ったこっちゃないがな」 「ふーん」 「葉っぱ片付けとけよ」 「はい」 「んーやっぱり、枯葉がほしいな、ん?」 そこには、掃除をしている僕と同じくらいの子。走って行った。 「ねえ、君、それどうするの?」 「枝は台所で使う、葉っぱは燃やす」 「じゃあ頂戴」 「頂戴ってすごい量だぞ」 ちょっと待ってて。僕は、クラウドにもらった大きな布を持って行った。 「これに入れて!」 その少年はタオと言った。 「へー、俺も十三だ」 「よかった、同じ年の子がいて、俺はポトよろしく」 山になった枯葉や切り落とした葉、布を巻いて担ぎ上げた。よたよたとした足取りに彼は後ろから支えてくれた。 「だ、大丈夫かよ」 「平気、平気」 タオは後ろからぐっと持ち上げて支えてくれた。そしてその布をごみの上にかぶせた。 「これは?」 肥料を作ってるんだ、さあ戻ろう、もう一回ぐらいでいいだろう。 タオの手伝いをして、枝は紐で巻いてきた。 「手際がいいんだな」 〈うちでもやってたもん。これでいい?〉 うんと言う彼とその枝をキッチンへと運んだんだ。 それからタオは、時間があると僕を手伝ってくれたんだ。 一週間がたって、やっと整理できてきた。 すると、どうしても必要なものが出てきたんだ。 「そうね、部屋にある薬草が手にはいればな、ポト?ポト?」 「お疲れなのでしょう、お部屋に連れていきます」 食べながら眠ってしまった。 「こんなに手が荒れて」 クラウドは手をやさしく握ってくれた。 ひょこっと顔を出したタオに、頼みごとをした。 「いいけどー、おっかねえぞ」 「別に悪い事をしてるんじゃないんだ、つれて行ってくれないか?」 タオの親方の所へ連れて行ってほしいと頼んだんだ。 「親方―、いますか?」 「何でぃ、タオ、仕事終わったのか?」 「ポト、ご主人様をお連れしました」 「主人だと?」 「おはようございます、お聞きしたいことがあってお邪魔しました」 わっ、この人も年寄りだ。 「忙しいんだ手短に頼む」 僕は、バラの手入れに必要なものがあるかと尋ねた。 「悪いな、俺は嫌いでね、どうもとげと相性が悪くていけねえや。スコップなんかはあるが、ほとんどねえだろうな、そこの小屋にあるもんは好きに使っていい」 「いいんですか?ありがとうございます、それともう一つ」 僕は、タオをあす一日貸してほしいと頼んだんだ。 「構わねえ」 「ありがとうございます」 それともう一つ、まだあるのかと言われた。 「今度、木を剪定するときは、僕も呼んでください、では失礼します、行こうタオ」 「木の選定?変なやつ?」
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