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「これは何?」
妖精たちに引っ張られ向かったのは姉さんの寝室、テーブルの上には見たこともないきれいな物が並んでいた。
「バラのしずくの結晶だ」
へ―これが?これは妖精たちしか作れないんだそうだ。
小さな小さなガラスのかけらのようなものはみんなで作ったもの、それを集めると四人は僕と姉ちゃんの手を取ってつないだんだ。
何をするんだろう?
エッグがそれに手を当てているとよいしょ、よいしょとくっつけはじめたんだ。
「できた、ポトにあげる」
「きれいだね、いいの?もらっても」
妖精たちにもらった綺麗な赤い宝石は涙のような形をしていた、エッグを連れて歩かなくても、魔法が使えるそうだ。
姉ちゃんがそれにひもを通してくれ首にかけた。
「やってみろ」
「失敗しないようにね」
「失敗した時はトイレだけには落ちるなよ」
「ポトはそんなへまはしない、やってみて」
よし、と僕はステッキを握りしめた。
「ステッキよ、僕を、温室へ!」
ドン!
風が足元から噴き上げた。
と次の瞬間。
そこはまさしく温室の中だった。
「よし、もう一度、ステッキよ、元の部屋へ!」
ドン!
また風が起きる、砂と埃を巻き上げて。
「ウップ、ゴホ、ゴホ」
「お帰り」
「できたみたいだね」
埃を巻き上げたまま部屋に戻ってこれたんだ。
できた、エッグがいなくてもちゃんと帰ってこれた。
そして姉ちゃんはやっと本を読み終わったと、僕に、魔法の事を教えてくれた。
「すごい、それじゃあ、物が運べるね」
「大きいものも運べるな」
すごいね。
今までの王家の人たちもそうしていろんなところへ行っていて、この国は潤っていたらしい。
王様やお妃さまだけじゃなく、血のつながったものにはなにかしら力があったそうだ。
「ふーん、親せきだね」
「そうね、伯爵家と呼ばれるのは親せきのようね」
「じゃあシュトラウドさんもなんだね」
姉さんは、調べてみないと分からないけどと言いながら次に冬まつりの話をしてくれた、この国には、変わった習わしがあるんだそうだ。それは、冬の一番寒い日に行われる儀式のようなものだそうだ。
いくら温暖な土地でも、今の時期はそれなりに寒い、年が明けた今、冷たい風はあの高い山々を下りてくる。
「太陽が一番短い日の光をバラに入れる日、この庭に、十二人の精霊が来ると言われていました。そのものたちは、この国の事を予言するのだそうです、そしてその言葉は絶対で、王ですら、それを覆すことはできないと言われているそうです」
「なんか聞いたことがあるね、お爺ちゃんが話してくれた物語だね」
「そうね、これだけはそのままなのよ、もうすぐその日だし」
後でその話を聞いた、そういえば、そんな話ありましたね、私は見たことはありませんけどとクラウドは云った。
「君が生まれた時には、それがもう見えなくなっていたという事だね」
「王は、彼らが決めていたと聞きます、ですが、今となっては・・・」
二十歳で逃げた爺ちゃん68年もの間王位は彼達の元にあったんだ。
逃げた、違うよな、自分の命を守ったんだもんな。
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