第一話 楡(にれ)の木屋敷の腰曲がりのポト

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 よそからって言ってもな、俺もよそ者か。 ベッドに入って考えてみた。枕元には、マフラーをぐるぐる巻きにした卵、それに話しかけた。 世界は広いっていうけど、どれくらい広いんだろう。 僕が知ってるのはその一部か、せいぜい、遠くに見える、この国のお城、でもあそこまで行くのに半日かかるんだ、一度行ったことがある、おべんとうをもって、じいちゃんと姉ちゃんと行ってきた、帰りは爺ちゃんの背中で寝たらしいけど、覚えてない。 寒くて卵を抱きしめた。 暖かいなー。  あとは、いつも行く、病院と、買い物に行く通りぐらい、腰さえ痛くなきゃ、もっと遠くまで行ける、あのいじめっ子たちみたいに走り回ってどこまでもいってみたい。あの道の先には何があるんだろう、海、それも見てみたい、お城のそばの湖で遊んだと姉ちゃんは言ったけど、今の僕の足で行ってみたい、いつか行ってみよう。いつか・・・・ それからさらに一週間がたった。卵はそれ以上大きくはなってないようでほっとした。  大晦日の日の朝、おはようと、抱いて寝ていた卵をテーブルの上に置き、僕は外にあるトイレに行った。 井戸から水をくみ上げた。 歯を磨き、冷たい水を含んだ、歯にしみる、体がぶるった。誰も見てないからちょっとだけ付けた水で顔を撫でタオルですぐに拭いた。怒られるかもしれないけど、いいや。 楡の木に向かって、 「じいちゃんおはよう」 おはようとどこからか声がしたような気がしたけど、気のせいかと思い家の中に入った。 姉さんは、食事の準備、僕はテーブルに、紅茶を入れ、食器を並べ始めた。 「あっ!」 「どうしたの?」 ポットに触れた時、しずくが卵にかかった。 「ごめん、熱かっただろ」 「はい、タオル」  パキン 「ウワー、姉さん、どうしよう、卵にひびが入った!」 パキン、パリ、パリリ、パリ。 ・・・カタン。 卵が二つに割れた。 「・・・きれい」 そこから現れたのは、一輪の小さなバラだった。横倒しになった半分の殻をカップに入れおこした。 「まだつぼみだね」 「ポト、ここは寒いは、今はいいけど、お日様が出てきたら窓辺に置いてあげてね」  寒い部屋だけど、あっためてあげたかいがあった。 でも卵からバラ?んー、考えてもしょうがないか、はは、魔法だったんだろうか?いろいろ考えても始まらないし。 その日は一日その花を眺めていた。 夜はマフラーを巻いてあげた。
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