第一章 旧校舎

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それにしても、なぜバットを持って学校に来たのか……。 (不思議ちゃんなのかな……) そんなことを考えているうちに校門に着く。 「私こっちなんだけど、君は?」 道を指しながら聞いてくる珠美。 「あ、おれもこっち」 聞けば、珠美の家は優介の家の割と近所にあるようだった。 (もう夜も遅いし) 当然ながら、一緒に帰ることになる二人。 「優介くん、だったよね?」 「う、うん」 「これって、君の?」 旧校舎で君の隣に落ちてたんだけど。 そう言って珠美は何かを差し出してくる。 それは。 「あ……」 優介の携帯電話。 そうだ。 これのためにわざわざ旧校舎まで行ったというのに、優介は今の今までそのことをすっかり忘れていた。 「あ、ありがとう」 「うん」 お礼を言って手を差し出せば、ポン、と優介の手のひらに乗せられる携帯電話。 やっと自分の手に戻ったそれを見つめながら、優介は思う。 (携帯なんて、今度にすればよかった。あんな目に遭うなんて……) 怖かった。 あんな恐ろしいものは、見たことがない。 思い出すだけで、体が震えた。 そういえば、珠美も旧校舎にいたはずなのになんともなかったのだろうか。 気絶する前に見た、珠美へと向かっていくあの化け物。 あのあと、一体どうなった? 「ねえ」 悶々と考える優介を現実に引き戻したのは。 「君に聞きたいことがあるんだけど」 隣を歩く珠美の声だった。
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