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立ち止まる珠美の動きにつられて優介の歩みも止まる。
先程までどこを見ているか分からない、気だるげな雰囲気を醸し出していた珠美。
だが、さっきまでとは全く違う。
鋭い目つきに、表情の読み取れない顔。
今は、触れれば切れてしまいそうなほどの圧迫感を感じる。
「な、何でしょう」
怖い。
あのとき、自分の体から出てきたもの。
あれをもし、珠美が見ていたとしたら……。
一体、何を聞かれるのか――。
「明日、暇?」
「……………え?」
しかし、珠美の口からでた言葉は。
予想外。
その一言に尽きた。
今日のことを根掘り葉掘り聞かれるのかもしれないと身構えていたのに、実際はまるで遊びに誘うかのような台詞。
ぽかんとして聞き返す優介に、珠美はもう一度同じ言葉を繰り返した。
「だから、明日暇?」
「……」
「あ、もしかして予定ある?」
「いやいやいやっ!何にもないよっ。すごく暇です!」
言葉につまり黙ってしまった優介だったが、相変わらず無表情のまま、首をかしげて質問を重ねてくる珠美に慌てて返事をする。
三連休は今のところ予定は入っていなかったはずだ。
「じゃあ、明日会わない?」
君は、私に聞きたいことがあるでしょ?
「え……」
その言葉に、どきっとした。
珠美はまっすぐ優介の瞳を見つめてくる。
聞きたいことは、ある。
今日の出来事。
「旧校舎」
答えあぐねていると、目を合わせたまま再び珠美が口を開く。
まるで優介の心を読んだように。
「あそこで、君は見てしまったんでしょう?」
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