第二章 異変

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――「あそこで、君は見てしまったんでしょう?」 「み、見たって……」 あの、化け物のことなのか。 すると、またしても優介の心を読んだかのように珠美は頷き、歩きながら言葉を発する。 「君がもし、今日の自分に何が起こったか知りたかったら。その覚悟があるのなら。明日、私の家に来なよ」 無理強いはしないけど。 「覚悟って、なんの……」 「……受け入れる覚悟」 静かにそう続ける珠美に、優介はすぐさま返事をすることができなかった。 珠美が言っているのは十中八九、優介の今日の恐ろしい体験のことだろう。 何が起こったか知りたかったら? 受け入れる覚悟? 彼女は一体何を知っている? 沈黙が続くまましばらく歩くと、珠美は一軒の家の前で足を止めた。 表札は、相楽。 ということは、ここが……。 「ここが、私の家だから」  振り向きもせずに珠美は優介に告げた。 「……ここに明日来ればいいってこと?」 硬い表情のまま、優介は訊く。 「来るか来ないか、決めるのは君だよ。今日のこと、忘れてしまいたいんなら来ない方がいい。世の中には知らない方がいいこともある。これもきっとそのうちの一つだから」 「……何だよ、それ……」 戸惑う優介に、ただ、と珠美は続ける。 「君が明日来るか来ないかは別として、一つ忠告しておくよ」 珠美は一旦言葉をきり、数秒おいてから次の言葉を発した。 「今の君だと、また今日みたいなことが起きるかもしれない」 気をつけた方がいいよ。 そう言い残して、珠美は家の中へと姿を消した。 その背中を、止めることもできずに優介はただ見つめていた――。
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