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ベッドに倒れこんだままの体勢の優介の口から、再びため息がもれる。
「何だよ、それ……」
珠美に投げかけたのと同じ言葉がまたこぼれた。
今の自分のままだと、また今日みたいなことが起きる?
意味が分からない。
意味深なことばかり言っておいて、選ぶのは自分?
そんなの、実際は選ぶ権利なんてないじゃないか。
だって。
(知りたいに、決まってる)
旧校舎にあんなものがいるなんて知らなかった。
放課後、掃除に行ったときはいつも通りだった。
そう。いつものように陰から送られる死者の視線を感じていた。
なのに。
自分に何が起こったか、知りたいと思うのは当然だろう。
本当なら、あそこで珠美にすぐ聞きたかった。
だが優介は結局、聞かなかった。
聞けなかった。
何故か、躊躇してしまった。
珠美に言われたから。それだけではなかった。
知りたいと思うのと同時に、何故か知ってはいけない気がしたのだ。
『知らないほうがいい』 『忘れてしまえ』
頭の片隅で、そう言われているかのように。
知りたくない。でも知りたい。
忘れたい。忘れられない。
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