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「………………!」
がつんと殴られたような衝撃が全身に走った。
救われてた?
珠美が?
こんな、自分なんかに。
「もう来ないって言ってたのに学校に来るようになった……。来年の夏祭りにまた行きたいって自分から言ってくれた。ぎこちないけど、笑ったり怒ったりするようになった………!」
「………っ」
「全部君がいたからじゃない!」
「花ちゃ……っ」
「っ知らないから……優介くんは前のたまを知らないから!もしおじさんに何かあったら今度こそ……。なんで、なんでたまばっかり……っ!もうたまが辛い思いするなんて嫌!」
胸の前で自分の手を握りしめながら花は駄々をこねるように首を振った。
その通りだ。
優介は、優介が出会う前の珠美を全く知らない。
どんな生活を送り、どんな思いを抱いて生きてきたかなんて。
知るわけがない。
だから。
花が言った通り、珠美の変化に気がつくわけがない。
信じられない。
優介がいたから珠美が変わったなんて。
信じられるわけが、ない。
「だったら尚更おれがいたらダメなんだ!」
気持ちが、爆発した。
押さえつけ自分の中で昇華していくはずだった心が暴れだす。
「おれといたらたまちゃんは傷つく………!おれが傷つけてしまう!たまちゃんの気持ちなんて考えないで!!だから……」
「それが何よ!!!」
「っ!」
花の叫びが優介の声をかき消した。
ものすごい声だった。
肩で息をする花の顔は涙でぐしゃぐしゃになっていた。
涙を拭うこともせず花は叫ぶ。
「人間なんだから当たり前でしょ!?傷つけることも傷つけられることもあるよ!!でも立ち直ることだってできる……ちゃんと向き合いさえすれば!」
「………!」
「気持ちを考えない……?自分でそう思うんだったら考えなさいよ!傷つけちゃうから一緒にいられないなんて……それがたまにとって辛いことだって分かんないの!?」
「花ちゃん……」
「たまを……見てあげて。いないみたいに振る舞わないで。存在を無視しないで………っお願い……っ……」
その場に花は泣き崩れた。
優介は、それを途方にくれたように見ていることしかできなかった。
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