第二章 異変

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「お邪魔します……」 小さく言って入った珠美の家はなかなかの大きさだった。 通されたリビングもさっぱりしていてきれいだ。 そういえば。 (おれ、女の子の家に入ったの初めてだ) そんなことに突然気づき、なんだかそわそわしていると、先程の言葉通り珠美が盆にお茶を入れて持ってきた。 「どうぞ」 差し出されたのは日本茶だった。 「あ、ありがとう」 お茶を見た途端、喉の渇きを思い出した。 なんだか高そうな湯呑みを手に取り、一口飲むとほろ苦い味が口の中に広がる。 ああ、日本の味だな、なんて一息つく。 そんな優介を珠美はじっと見つめている。 「………」 「………」 もう聞いてもいいのだろうか。 だが、なんと切り出せばいいのか……。 「………」 しかし、沈黙は長くは続かなかった。 なぜなら。 「何から聞きたい?」 彼女は単刀直入だったからだ。 「そのためにうちに来たんでしょ?」 「う、うん。………その前に一つ確認なんだけど、相楽さんって視えてるんだよね?」 今さら?と思わなくもなかったが、これは大事なことだ。 珠美は瞬きを一つすると、口を開いた。 「そうだね。霊感があるっていう意味でなら、私は視える人ってことになるね」 やっぱり。 「じゃあ、昨日旧校舎にいたあれは……?」 「あれは………」 人間の成れの果て。 彼女が言うには、あの旧校舎は元々良くないものが溜まりやすい場所らしく、あのとき優介が視たものはその集合体なのだそうだ。 そして昨日たまたま学校に用事があって来ていた珠美が異変を察知し、優介を見つけたのだという。 「君みたいな視る力しか持ってない人間はああいうのにとって、ちょうどいい餌なんだよ」 「餌、って………」 そのままの意味だと彼女は言う。
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