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「あいつらは抱えきれないほどの負の感情を抱いたまま死んだ人間が成仏できずに彷徨い、自我を失ってできた存在」
だから生きている人間の負の感情を感じるとその人間を取り込もうと寄ってくるのだ、と彼女は続ける。
「あれが側にいるとね、その人にとって思い出したくもない過去や心の底に沈めた暗い感情が浮き上がってくるの」
君も、そうだったんじゃない?
「私が旧校舎に行ったとき、君はもう取り込まれる寸前だった。助けるつもりはなかったんだけど……私まで狙ってくるから、つい祓っちゃったんだよね」
結果的には助けたことになっちゃったかな?と言って珠美は首をかしげている。
だが、優介はそれどころではなかった。
話についていけない。
そんな非現実的なことがあるのだろうか。いや、幽霊が視えるということだけですでに現実的ではないのかもしれないが、優介は混乱していた。
「は、祓った、って、どういうこと……?」
彼女は霊媒師か何かなのだろうか。
「祓ったと言うより、粉砕したって言うのかな。たくさんの霊が集まった存在だから、そのつなぎ目をほどけば元の小さな状態に戻っちゃうんだよ」
「………よく分からないんだけど、相楽さんって霊媒師なの?」
お祓いができるということは、そういうことではないのか。
しかし、問えば珠美は首を振った。
「そういうわけじゃないよ」
「でも、祓ったって」
「いろいろあってね……」
さらに突っ込んで質問しようとする優介に珠美ははぐらかすような言葉を返す。
あまり話したくないのかもしれない。
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