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そうだ。すっかり忘れていたが、ここは彼女の家。
「……」
あんなところを見られてしまったのだ、決まりが悪い。
さっきまで感じていたイライラは後悔のせいだろう、胸の重みに変わっていた。
「喧嘩?」
そして、未だ優介の顔をのぞき込んだまま珠美は聞いてほしくないことをズバっと聞いてきた。
「……喧嘩って言うか、おれが勝手にキレただけって言うか」
「ふーん」
自分から聞いてきたくせに、あまり興味がないのか、適当な返事を返される。
「君が何故突然霊につきまとわれるようになったか、分かる?」
いきなり何を言い出すのだろうか。
……そんなの。
「分かる訳ないだろ」
いちいち言い方が回りくどい。
「じゃあ、教えといてあげる」
これから大変だろうからね。
そう付け足した珠美から告げられた内容。
それは。
―――優介のように人より少しだけ霊力が強い人間というのは悪霊にとって格好の餌食。
そして、昨日の優介のように取り憑かれてしまったとき、ごく稀にだが霊たちと波長が合いやすくなることがある。
今までより視えるようになってしまったり、霊から接触されるようになったりする体質になってしまう。
正に、今の優介の状態だ。
「そ、れで、おれは、どうなるの」
「勝手に波長が合っちゃうってことは、常に霊力全開でいるってことだから……いずれ力尽きると思う」
その言葉に、鳥肌が立つ。
「ち、力尽きるって……」
優介の脳裏に浮かぶ一つの言葉。
一気に血の気が引いていく。
きっと今、自分は青い顔をしているだろう。
「ああ、でもすぐにって訳じゃないよ。まだ君は生気に満ちあふれてるからね。二、三年は大丈夫だと思う」
最も、取り殺されるとしたらもっと早いかもしれないけど。
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