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そんな恐ろしいことを、珠美は淡々と告げた。
長くても、あと二、三年しか生きられない……?
信じられるわけがない。何かの冗談に決まっている。
そう思いたかったが、昨日今日と続けて感じた命の危険。そして異様なまでの体の重さ。
それらがうそだと決めつけることを躊躇させていた。
それに珠美がうそをついているようにも思えない。
だが、突然突きつけられた余命宣告を優介はとてもではないが受け止められなかった。
死にたくない。まだ死にたくない。
「なんとか、なんとかならないの!?相楽さんだって今のおれと同じくらい視えてるんだよね!?」
必死に珠美にすがりつくように身を乗り出して聞く。
珠美は優介がこんなに取り乱しても冷静なままだ。一口またお茶をすする。
「私は自分の力をコントロールできるから。必要なときだけ視て、それ以外は視ない」
「力のコントロール?」
「そう。自分の力に振り回されないようにためには力のコントロールが必要なんだよ」
なんでもないことのように彼女は言ったが、それは今の優介に正に必要なものではないのか。
「なら、力のコントロールができれば、おれは死なずにすむってこと?」
藁にもすがる思いだった。
珠美は優介の言葉を聞いて、今思いついたように返事をした。
「ああ、それも一つの方法だね。自分で波長を合わせられるようになれば力尽きることもないし、昨日や今日みたいに取り憑かれたりする心配もなくなる」
その言葉に、絶望の中の一筋の光が見えた気がした。
ずっと切羽詰ってあせった顔をしていた優介の顔が少しだけほころびかけた。
珠美はコントロールができると言った。なら。
「おれに、その力のコントロールを教えてください!」
恥も外聞もなく、男のプライドも捨てて懇願した。
だが。
「私には無理かな」
言い放たれたその台詞に、優介の希望の光は消え去った。
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