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「な、なんで……っ!!」
声が勝手に裏返った。
なぜだ。せっかく希望が見えたと思ったのに。
ほころびかけた顔の筋肉が再び強張った。
顔が引きつり、声も大きくなっていく優介とは対称的に珠美は全くの無表情だ。
「なんでって言われても、コントロールの感覚っていうのは一人一人違うものなんだよ。だから私の感覚をを下手に伝えても君にとっては逆効果だよ」
そんな。
「それに、今の君の状態じゃたぶん無理」
そんな。
「話はこれくらいかな。今日のところはもう帰りなよ。家まで送ってってあげる。私がいればそこらへんの霊たちは寄ってこれないから」
また聞きたいことがあったらおいで。
黙り込んでしまった優介に珠美はそう言った。
彼女の言ったとおり、自宅までの帰り道では何かを視ることもなく、何かが起こることもなかった。
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