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――そして今に至るというわけだった。
本当は、携帯なんて来週でも良かった。でもここで逃げるのはいやだった。友哉にいつまでもびびりだと思われたくなかった。
そんなちっぽけなプライドのために友哉の前で意地を張り、たった一人で旧校舎までやってきた優介だったが、ここにきてなかなか前に進めずにいた。
(まだ中に入ってもいないのにざわざわする………)
昼間来たときとは比べ物にならないほど気味が悪い。
それでもここで立ち止まっていてはどうにもならない。覚悟を決めて優介は旧校舎の入り口に立った。
ガチャリ。
大袈裟なほどに大きな音をたてて旧校舎の鍵は開いた。
中は当然真っ暗で、放課後に掃除をしたばかりだというのに埃の匂いがひどかった。
(大体、ほとんど物置にしか使ってないのに掃除する意味あるのかよ)
心の中で愚痴りながら暗闇の中で優介は昇降口の電気をつけた。ジジジ……、と古くなった蛍光灯が音をたてて闇を照らす。
今見える範囲には何もいないようだった。携帯をどこで落としたかはわからないが、旧校舎が割と小さな造りであることが救いだ。
(怖くない、怖くない……。落ち着いて探せばすぐに見つかるはずだ。)
自分に言い聞かせながら携帯を探し始める優介。
まずは、 一番最初に掃除をした昇降口のすぐ側にある職員室。職員室とは言っても、すでにそこはボロボロになった机や椅子が埃をかぶって積み重ねられているだけだ。
埃をかぶっているといっても一応は整理整頓されているため、パッと見ただけでお目当ての物はなさそうだった。
それでも念のため、あまり広くない職員室を隈なく探したが、やはりここにはないようだ。
がっかりした優介だったが、気を取り直して次に掃除をしたトイレへと向かおうとした、そのとき。
―――くすくす……。
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