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第十九章 魂の牢獄
遠くで、誰かが呼んでいる---。
キーンコーンカーンコーン……
耳馴染みのある音に、珠美は肩をピクリとさせた。
微睡んでいたのかいつの間にか閉じていた瞼をゆっくりと持ち上げる。
視界にあるのは暗がりで、肩が少し張っているから突っ伏して寝ているのが分かった。
「ん……あれ……」
見覚えのある風景。
きれいに磨かれた黒板。
きっちりと揃えられた机。
珠美の通う高校の、教室だった。
三十六個ある机のうちの一つ、自分にあてがわれた席でいつの間にか寝入っていたようだ。
まだぼやけた頭で一度伸びをする。
教室を見渡すが、自分以外は誰一人として姿が見えない。
放課後なのか。みんな帰ってしまったのだろうか。
ふと時間が気になって時計に目をやる。
「…………」
無言で珠美は眉を寄せた。
自分から見て、黒板の右上にかけられた安っぽい時計。
もちろんそれは時を確認するためにあるものなのだが……。
「……針がない」
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