第十九章 魂の牢獄

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『たまちゃんっ!』 「は……っ、は……」 地に手をつき、もう片方の手で胸を掴んだ珠美は目を見開く。 何が起きたのかを思い出して。 落ちてくる天井。 降り来る瓦礫。そして。   地下牢を支えていた梁が折れる音。 身を、貫いた衝撃。 その直前に暖かな何かに包まれたこと。 腹を押さえる。 痛みはもう去った。 体験したことのないような凄絶な痛み。 その衝撃はまだ生々しく残っている。 あの痛みは現実の痛み。 珠美の身に確かに起きたこと。 だが、それ以上に。  「優介くん…………?」 か細い声が漏れた。 全身が震えている。 今この状況が示すことが、とてつもなく恐ろしいことな気がして。 自分は、まだ死んではいないらしい。 梁に身を貫かれ、それでもなお生命を繋いでいる。 ここにはない自分の心臓がかすかに動いているのを感じる。 弱々しくも、まだ生きている。 彼は、どうなった。 珠美を包んだ暖かな何か。 かばおうとしたのか。 珠美と共に貫かれた彼。 無傷なわけが、ない。 「どこ……優介くん……っ」 声を張り上げても返事はない。 分かっている。彼はここにはいない。 だがそれは彼が無事だということを証明しているわけではない。 最悪の想像が脳裏をよぎりそうになるのを珠美は振り払った。 違う。そんなことない。 そんなこと、あるはずがない! この世界から抜け出さなければ。 目を、覚まさなければいけない。
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