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「私は……来未を救いたい」
「そんなこと。たのんでない。わたしはだれにもすくえない。こののぞみをかなえることはだれにもできない……!」
珠美の言葉に来未は叫んだ。
血の涙を流しながら、頬の肉が剥がれ落ちながら、悲鳴のように叫ぶ。
「すくいなんてのぞんでいない!わたしが、のぞんだのは……!のぞんだのは………ただ、生きたい。それだけだった。たったそれだけだったのに!!」
その言葉は、珠美の胸に突き刺さるようだった。
生きたい。
その想いをかきけしたのは、自分なのだから。
何を言われても仕方がない。
でも。
「ごめんね……来未………それだけはどうしても。どうしても、叶えてあげられない」
失った命は取り戻せない。
生ある世界からこぼれ落ちた魂は、たとえどんなことがあっても取り戻すことはできない。
還る肉体もない、まして、十年も前に失われた命は。
それは、決して覆すことのできないこの世界の理だ。
そのことを来未も本当は理解している。きっと、誰よりも。
誰にも、どうすることもできないのだと。
それでも……この子のために、珠美ができることはまだある。
「でも輪廻の輪に来未を返すことはできる」
「………」
本来の流れの中に来未を戻す。
それは可能だ。
ここに囚われていては、来未は永遠にこのままだ。
どこにも行けず、どんどん負の感情を増大させ次第にあの異形のように、人であったことすら分からなくなってしまう。
今ならまだ間に合う。
幸いにして来未の魂はまだ穢れを負ってはいない。
他人の命を背負ってはいない。
珠美や鬼っ子と違い、生命の流れを乱していない来未は、まだ真っ白なままだ。
ならば、今世の記憶を洗い流し、輪廻の輪を巡れば……再び生を得ることもできる。
全く別の人格として。
相楽来未ではない人生を歩む。
それは遠い未来の話。
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