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この子は珠美を憎んでいた。
今は穏やかに眠っている。
最期に姉と呼んでくれたのは、許してくれたからなのか。
珠美にはわからなかった。
それでも。
どちらであっても関係ない。
この邂逅は、きっと奇跡で。
ずっと昔に自分がかきけしてしまった、小さな命。
大切な大切な、珠美にとってたった一人の妹。
例え憎まれていたとしても。
「ずっと、顔、見てられる、なぁ……っ」
どうしようもなく愛おしかった。
ずっとずっと会いたかった、たった一人の妹。
姉妹としていられた時間はほんの一瞬しかなかった。
もっと、一緒にいたかった。
「でもっもう、休ませてあげないと……っ」
ぼろぼろに傷ついた来未を癒せるのは、自分じゃない。
安らぎを与えられるのは、ここじゃない。
この子にふさわしい場所に。
彼岸に、送らなければ。
「最期まで……一緒だからね」
溢れる涙をぬぐいもせず、珠美は意識を集中させた。
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