第二十章 境界

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どれだけ幅広いのだろう。 周りにいたのは、優介だけではなかった。 知らない人間が何人か、同じように立ち尽くしていた。 生気のない顔。 男も女も、年齢すらも何の規則性もなく彼らはそこにいた。 彼らはしばらくするとゆったりと歩みだし、川へと入っていく。 底がないのか。 彼らはその中に入り、ゆっくり沈み。 誰一人として戻ってくることはなかった。 これが、三途の川なのか。 「ほんとに……あったんだ」 不思議と怖いとは思わなかった。 光源なんてないはずなのに透き通って光を返すこの川は、きれいだった。 虹色に輝く川の中には赤い彼岸花が揺れている。 ここに入ってみたいと何故かすぐに思った。 ここに入れば……楽になれる。 けれど優介は留まった。 彼女のことを考えて。 自分は彼女のことを救えたのだろうか。 必死に守ろうとしたけれど、きっと無傷ではない。 無事を信じたいのだけれど。 優介にはそれを確かめる術がなかった。 だからここにいたのだ。
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