第二十章 境界

8/27

716人が本棚に入れています
本棚に追加
/702ページ
「…………っんで」 覚悟は決めたはずだったのに。 「っ……おかしぃ、なぁ……おれ……未練たらたらみたいだ……」 今になって後悔が押し寄せる。 ただ一緒にいたかった。 生きていてほしい。 笑っていてほしい。 そこに、自分も一緒にいたかった。 彼女の隣にいられたら。 ほんの小さな願いだったはずなのに、それはどんどん大きくなる。 やけつくような感情を優介は初めて味わった。 ずきずきと胸が痛んで、強くそこを押さえるけれど、あいにく優介の心臓はもう動いていない。 なら、なぜこんなにも痛いのだろう。 冷たい体の、一体どこがこんなに痛みを訴えているのだろう。
/702ページ

最初のコメントを投稿しよう!

716人が本棚に入れています
本棚に追加