第二十章 境界

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息が、つまった。 優介がかつて自分の力を受け入れたきっかけを作ったのは、珠美だ。 彼女の強い力によって救われた。 そう思っていた。 でも、違う。 あの日、呪われた面をつけてしまった少年に大怪我を負わされた。 その結果、優介は自分を守っていたミサンガを失った。 珠美は、激怒した。 何故勝手なことをしたのかと。 そして。 『……生きてて、よかった……っ』  か細い声で、珠美はそう言った。     今にも泣きそうな表情で。 そして、どんなものも見捨てられないことに葛藤する優介を、それでいいと、認めてくれた。 少し呆れたような顔をしながらも、笑って。 それが優介らしいことだと言ってくれた。 ああ、そうか。 関係ない。 関係ないんだ。  ただ自分は、珠美が本当にそう言ってくれたから、だから、受け入れられた。 救われた。
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