第二十章 境界

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家族のことも友達も。 学校。 自分のことすら全て忘れて。 進んでいく。 次の生のために。 それは当然で、仕方のないことなのに。 ああ。 (忘れたく、ないなあ……) 己の命を賭してまで、救いたかった人のことも忘れてしまうなんて。 今の優介にはあまりにも残酷だった。 「空が、この世界の正門。でも……」 きっと。 彼女は、空を仰ぎ見た。 珠美と同じ髪質の髪がどこかから流れてきた風でさらりと揺れる。 「今から、裏口が開く。私はそれを信じている……」 「それは、一体どういう……」 彼女の言うことはどこか抽象的で、何を言いたいのかがよく分からない。 問いかけようとしたときだった。 「っ!」 視界が突然白く染まった。
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