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「ひっ!」
姿は見えないが確かに聞こえた笑い声、そして今も感じるねっとりとした視線。優介の頬を冷たい汗が流れた。
やばい。携帯は今度でいい。とにかくここから出ないと。
そう直感した優介は職員室から出て昇降口までの短い距離を全速力で走った。
しかし。
「な、何で開かないんだよっ!」
昇降口の引き戸はどれだけ力を込めて開けようとしてもびくともしなかった。
鍵がかかっているのかと見てみても、そういうわけではないようだった。
そもそも、優介は昇降口を開けたままにして中に入ったはずだ。なのに、何故閉まっている。学校に残っている教職員ではないだろう。彼らは優介が旧校舎の中にいることを知っている。
外に出られないという事実といまだ感じる視線に優介は今にもパニックを起こしそうだった。
(そうだ、窓……!窓からなら出られるかもしれない)
窓ならもし開かなくても割って外に出られる。
そう思って今出てきたばかりの職員室に向かおうとした瞬間だった。
バチッと音が鳴って蛍光灯の明かりが全て消えた。
「………っ!!」
途端に襲ってくる暗闇、そして恐怖。
まだ目が慣れず何も見えない中、ただ立っているだけのほうが恐ろしくて優介は必死に職員室へと震える足を動かした。
夜目がきく優介は職員室に着くまでの間にぼんやりと周りのものが見えるようになっていた。
(早く……、早く外に出ないと)
外に出たい一心で中に入ろうとした優介だったが。
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