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第六章 林間学校 前編
「花ちゃんも友哉も、大丈夫か?」
「大丈夫じゃないかも……」
「うー、吐きそ……」
賑わうバスの中、すぐ隣で今にも吐きそうな声を出す友哉に優介は黙ってコンビニ袋を渡した。
通路を挟んだ隣の花も青い顔をしている。
今日から優介たちの学年は二泊三日の林間学校だ。
その合宿所に向かうバスに揺られてもう一時間半。
イベントが好きな花と友哉は最初から大はしゃぎしていたのだが……山のくねくねとした道のせいでバス酔いをしたらしい。
最初の勢いはどこに行ったのかというほど青い顔をしている。
「優介……俺ちょっと寝るから着く頃に起こしてくれ………」
「了解」
優介の返事を聞くと友哉はすぐにパーカーを被ってしまった。
乗り物に酔ったときは一回眠ってしまえば治ることが多いものだ。
「花ちゃんも着くまで寝てた方がいいんじゃない?」
「………横になりたい…………」
花の呻くような声にバスに乗ってからずっと寝ていた珠美が目を開けた。
「……たま。補助席に座ってもらってもいい………?」
「ん……」
珠美は花の青い顔を見て察したのだろう。
すぐに窓際の席から通路に出てきて補助席を出した。
花はすでに横になっていた。
「登山は明日で良かったよね。二人ともこの調子じゃ登れなさそうだし」
「……そうだね」
優介が言うと珠美は欠伸をもらしながら返事をした。
今回の林間学校のメインは登山なのだ。
高校生にもなって学校で登山かよなんて言うクラスメイトもいたが、優介は楽しみにしていた。
早く明日になってほしい。
つらつらとそんなことを考えていると。
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