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第二章 異変
「おかえりー、お兄ちゃん」
家のリビングに入ると、ソファーでくつろぎながらテレビを見ていた中学一年生の妹がこちらを向く。
「ただいま、紗英」
「今日遅かったんだね。夜ご飯食べる?」
「あー、今日はちょっといいや」
空腹を感じてはいるが、今日はもう眠りたい。
「明日の朝食べるからとっておいて」
「りょうかーい。あ、そうだ。お母さんもう夜勤行っちゃったから」
「ん、分かった。紗英、おれもう寝るから戸締りやっといてくれるか?」
はーいと返事をする紗英にお休みと言い、二階にある自分の部屋へと向かう。
パタン。
自分の部屋へ入るなり、優介は制服のまま電気もつけずにベッドへ倒れこんだ。
(疲れた………)
今日一日だけでたくさんのことがありすぎた。
~~♪
(……携帯)
優介の制服のポケットから着信音が聞こえる。
この音は、電話だ。
誰なのかは想像がついた。
ごそごそとポケットから携帯電話を取り出す。
ぱかり。
音をたてて開いた携帯電話に表示された名前。
――篠崎友哉――
(………)
ぱたん。
開いたばかりの携帯を閉じる。
出たくない。そう思った。
電話はまだしつこく鳴りひびいている。
今日のことを聞いてくるのは間違いないだろう。
それを上手く説明できる自信が優介にはなかった。
あんなものが自分の中から出てきました、なんて言えるわけがない。
そんなことを考えている内に、電話は切れた。
優介は安堵のため息をつく。
だが。
(あれ……。なんでおれ安心してんだろ)
友哉は友達なのに。
嫌だと思ってしまう自分がいる。
そんなこと、思ったこともなかったのに。
ムカムカする。
旧校舎に行ってから、なんだかおかしい。
(明日……、どうしよう)
先程別れたばかりの珠美の言葉を思い出す。
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