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第十五章 心 後編
「………………」
頭の中で今日一日のことが駆け巡る。
自宅のベッドで優介は横になっていた。
電気をつけていないから部屋の中は真っ暗。
ベッドに潜り込んだのは大分前のことだ。
だが優介は眠ることができなかった。
目を閉じれば鮮明に旧校舎での出来事が脳裏に浮かんで。
眠りへ落ちることを邪魔した。
(結局……おれは、何がしたかったんだろう)
『この偽善者』
『それでも、たまは救われてた』
深く息を吸い込む。
そうしないとすぐにでも心臓が嫌なリズムを刻みそうだったから。
(………………)
側にいることで、傷つけてしまうと思っていた。
だから彼女から離れようとした。
そうすることが一番だと思った。
でも……。
これは、そんなに簡単なことなのか?
一人で悩み、一人で決めた……その選択が正しかったのかは分からない。
ただ、そう選択して優介の中で迷いが消えなかったのは確かだ。
それは……。
きっと、彼女と決別することが優介にとって本当に望むことではなかったから。
恐らく、珠美にとっても。
あくまで鬼っ子の言った珠美の本音を信じるならばの話だが。
よく、考えなければ。
どの道このまま何もなかったことにして日常に戻ることはできないと優介は思った。
今日はあまりにも大きな出来事が多すぎた。
珠美に取り憑いていた鬼っ子と名乗るあの存在。
今まで感じたことのないほどの絶対的な力を感じた。
そう、珠美の力を越えるほどの。
消える直前に、次こそ……と言っていた。
きっと、このまま終わらない。
それは直感だった。
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