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外伝 鬼日譚
「私、悪霊になってるかも」
「っ、ぶっ……!」
突拍子もない発言に、優介は含んだ炭酸水を吹き出した。
ある夏の、何でもない一日のはずだった。
彼女のその一言が、この夏一番の恐怖を予言しているようで。
扇風機しか回していない部屋の室内の温度が一気に下がったような気がした。
ゾクゾクと悪寒を訴える身体をさすり、笑顔を張り付けて優介は彼女を見た。
向こう側が透けて見える身体を宙に浮かせる、珠美を。
絵に描いたような幽霊の姿を晒す、珠美を。
「い、い、一体何が起きてそうなったの!?」
彼女は困ったように首を傾げて見せた。
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