第四章 花見

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第四章 花見

「相楽珠美です。初めましての人がほとんどだと思いますが、今日からよろしくお願いします」 自己紹介をして軽くお辞儀をする珠美。 「みんな、相楽と仲良くするように」 クラス全員に声をかけ、珠美に席に着くよう指示する先生。 朝から転校生が来るのかもしれないとざわついていたクラスメイトたちはしんと静まり返って珠美を見ている。 だが彼女はそんなことお構いなしとばかりに雲一つない真っ青な空が見える窓際の一番後ろの席に腰掛けた。 三連休が終わり、珠美は本当に学校にやってきた。 もちろん服装はジャージではなく、学校指定の濃紺のセーラー服だ。 先生が連絡事項を告げて朝のHRが終わる。 だが、珠美に声をかける者は誰もいない。 小学生や中学生なら興味津々で新入りの周りに群がるのだろうが、高校生ともなるとみんな遠巻きに見ているだけだ。 優介は二つ隣の席に座る珠美を見た。 珠美は周りの視線を気にすることなく一時限目の準備を始めている。 きれいな顔立ちに乏しい表情。なんとなく話しかけづらい雰囲気だ。 ……話しかけた方がいいのだろうか。 一瞬の迷いの後、優介は自分の席から離れて珠美の元へと歩き出した。   しかし。 「たま!」 優介のすぐ横を誰かがひゅっと音を立てて素早く通り過ぎた。 「たまー!!やっと学校来たんだね!」 声の主は叫ぶのと同時に走る勢いのまま珠美へと抱きついた。
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