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数十分後―――――。
「ハァ、ハァ…男でもきついじゃないっ!」
『ハァ、ハァ、……もっと体力をつけねばっ、、ハァハァ……』
私とジャスミンだけがバテてた。
ちさとを抱っこしたジーク兄上は勿論のこと、同じようについてきてる護衛のクリス達は涼しい顔だ。
そこはやはり鍛錬している騎士である。
やっとこさ展望塔のてっぺんに到着すると、ジャスミンと2人して地にへたばった。
今日は、自分の不甲斐なさをよく思い知る日だなと思った。
第一継承の第一王子のように権力も無ければ、市井の血が入った王子には後ろ盾がない。ジーク兄上やヒューズのような突飛出た何かがあればまだいいが、生憎私には自慢するものが一つもない。
しかも、こんな事でへたばるという不甲斐なさ。
兄達に"ないない尽くしの王子"と言われてるのを改めて自覚する。
そんな私に王族の資質とやらを見せてやると啖呵を切ったジャスミン。その後、何をとち狂ったか自分でも何か出来るんではないかと勘違いした私。
『やはり私は私か、、、』
そう呟いて自虐的な笑いが出た。
すると、地に手をついていた手をぐっと握られる。
それは見覚えのある指輪を付けた手だ。ゴツゴツした、大きな手。
「あんたが今何を考えてるか知らないけど、さっきの思い出せない事も含めてケセラセラよ」
『……ケ…セラ…セラ…?』
「なるようになるって意味よ」
『なるように…なる……』
ジャスミンの言葉を理解しようと反復する私。
そして息を整える為か、大きな息を吐いてからこう言ったジャスミン。
「人間、開き直ったら、意外と物事が簡単に進むものよ。言っとくけど、開き直るは諦めるじゃないからね。開き直りは物事から逃げないで出た結果を受け止めるっていう決意が出来てるの。覚えときなさい。どうしようもないと思ったら、"ケセラセラ"よ。これは私が知ってる魔法の言葉。指輪のお礼に教えてあげる♪」
何だろう。憑き物が落ちた。
見ればジーク兄上達も私達の会話を聞いていたのか、「ケセラセラ…」と呟いていた。ちさとがジーク兄上の腕の中で足をブラブラさせている。
きっと、この場に居る全員に魔法を掛けた事を……こいつは分かっていない。
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