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眉間に皺を寄せ、何とも言えない顔をしたジャスミン。
『斬れないだろう?そんな役にも立たない人間は、現時点で足手まといというんだ。わかったか?』
「!」
それ以降、口をへの字にしてぶすっとしてるジャスミン。
それを見てクリス達は苦笑いを浮かべていた。
年は33歳だが、存外に子供っぽい所があるらしい。
それもこいつの愛嬌かと心で呟く。
そして、出店で買った指輪をぶすっとしながらも撫でてるこいつに、きっと私を心配しての事だろうと嬉しくもあり可愛らしく感じた。
そして、馬車がミシェル商会についた。
玄関前で、当主が出迎えてくれる。
「アラン王子、お待ちしておりました。当主のミシェル・ハートマンでございます。早速ですが、その輩がいる場所に行かれますか?もし、行かれるのでしたら私どもの護衛もお使いください。騎士様に負けず劣らずの強者です」
『かたじけない。有難く、使わせてもらう。だが、その何名かをこの馬車につけてくれないか。こいつを王城に帰す』
「・・・?」
こいつと言われたジャスミンを見て首を傾げる当主。
従者の恰好をした男を大事に護衛ですか?と顔に書いてあった。
仕方なく乙女という事は隠して説明する。
『こやつは従者に変装させてはいるが、とある国の私の友人だ。我が国に遊びに来ていたのだが、星の乙女が誘拐されたと聞いて捜索に加わってくれたのだ。だが、機転がまわる頭はあっても剣を振るう腕がない。ガルドラが関わってるかもしれなのなら、腕に覚えがない人間は足手まとい。よって、王城に帰ってもらう』
そう説明すると、3名の強者を付けてくれる事となった。
馬車が出る時、ジャスミンの指輪を付けてる手を握る。
『言い忘れていたが、このルキアの石言葉は"勝利に導く"だ。私の乙女がそれを付けてて、私の身に何かあると思うか?』
「・・・・・・無茶しないでよ」
ぶすっとしていたジャスミンが、やっと私を見てそう言った。
『安心しろ。お前が思う以上に私は臆病者だ』
そう言って笑うと、同じように笑ったジャスミン。
ジャスミンの乗った馬車を見送り、私達はガルドラの手の者がいるという場所に向った。
だがその数分後、ジャスミンも行方不明になるのだった。
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