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「凄い人ね」
「ああ。どっからこれだけの人が集まるんだろう」
二人で少しでもよく花火の見える場所へと移動しつつ、その人の多さに辟易としてしまう。そして、なんといっても暑い。
花火会場は海沿いとはいえ、これだけ人がごった返していては海風を感じることすら出来ない。ただひたすら蒸し暑い。もう日も完全に落ちたというのに、一向に気温が下がった気配もない。
「押さないでください。走らないでください」
警備の人も、人の多さに注意が多くなっていく。暑い中、警備は大変なのだろう。声が若干不機嫌だ。
「暑いね。どっかにかき氷でも売ってないかな」
由衣がそう言うので、必死に目を凝らして見るも、どこにもかき氷の屋台はなさそうだった。というより、会場近くは危険だからと屋台はないはずだ。ちょっと離れた場所にいつも設置されている。
「あ、そっか。もう少し早くに待ち合わせすべきだったね」
「あ、ああ。そうだね」
屋台を楽しむ。そこをプランに組み込まなかったのは自分の落ち度だ。慶太は評価値が十点ぐらいは下がっただろうかと、ちょっと気が気では無い。
「うおっ」
「あ、ごめんよ」
どんっと後ろから押され、見ると子連れのお父さんだった。子どもに気を取られて当たったらしい。
「いえ」
「あ、麻未ちゃん」
と思うと、今度は由衣が人混みの中にクラスメイトを見つけて手を振る。それを、慶太は悪いかなと思ってちょっと横に避けていた。というのも、慶太はそれほど女子の受けがいいわけはない。クラスでの人気は下だろう。クラス一に近い人気の由美が、こんなふがいない男と一緒いると友人に思われていいのか。そう思ってのことだったが、これが間違い。
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