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「橋本も誰かと?」
「ああ。ま、会場に行かないことにはどうしようもないな。行くか」
「え、うん」
まさかの、まさかの恋のビッグイベントで男と二人きり。最悪だ。なんとか、何とか早く和毅の連れが現れてくれることを祈るしかない。
「押さないでください。会場内、大変混雑しております。押さないように」
そして花火の見える位置に到着すると、これがまあ恐ろしいまでの人混みだった。これはもう、誰かを探すなんて不可能の状況。
「どうやら二人で見るしかないみたいだな」
「う、うん」
和毅はLINEで相手の位置を確認して舌打ちしている。一方の慶太はというと、由衣のLINEを知らない。夏休み前に学校で口約束したのみだ。圧倒的に再会できる可能性がゼロとなる。
「あっ」
しかし、そんな気分もど~んという花火の大きな音に打ち消されてしまった。小さい頃以来の会場で見る花火。それはとても綺麗だった。
「綺麗だな」
「ああ」
本当なら由美と交わすはずだった会話を、何が悲しいかそれほど仲良くない和毅と交わす。非常に、非常に複雑な気分だが、それでもいいかと思ってしまう自分もいた。
「なあ、橋本ってゲームするの」
「するよ。お前、俺を何だと思ってんだ?」
「え?ガリ勉」
「殺すぞ」
「ええっ。だってイメージないし」
そんな会話を、綺麗な花火を見ながらするんだから、情緒もへったくれもない。
「どのゲーム?」
「魔法都市ってゲーム」
「マジで。俺もはまってるんだよ。連携しねえか」
でもって、なぜか和毅と友好を温めることになってしまった。和毅は意外そうな顔をしたものの
「いいぜ。後でな」
とあっさり了承した。これも花火がなせる技か。
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