残された想いの向かう場所

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ローラ「ん、んん。どうして私。いつの間に眠って‥思い出せない。 もう朝なのね」 外を窓から眺めてみる 外は相変わらずの吹雪で止む気配は見えていなかった。 それに合わせて私の気持ちすら暗く沈んでいくような感覚を受ける ローラ「やっぱり止まなかったのね。 あぁ、でも皆さんに挨拶だけはしておかないと きっと大丈夫よね」 身支度を整えロビーへと降りた ローラ「おはよう皆さん。今日もダメそうですね。明日こそは晴れてくれればいいのだけど」 そこまでを世辞としてまとめて言ってしまったものの、そこで皆から流れる不穏な雰囲気に疑問が浮かぶ ローラ「あの‥‥なにかあったのですか?」 恐る恐る聞いてみることしか私にできることはなかった クリス「あぁ‥あのモブ爺さんが死んだってことだよ。だから犯人がいないかってピリピリしてるんだ 俺たちが」 淡々の告げるクリスさんに驚きが隠せない この話が本当であれば人が一人死んだのだ なのにこの人は何にも思っていない。 ローラ「っ‥なんで。そんなことをする利益が? この中の人にあったと思っているの?貴方は」 普通とは違う反応に恐怖と困惑が入り交じって わなわなと震える手をぎゅっと握りしめ 声を荒らげてしまいそうになるのを押さえて 問いかける クリス「それ以外に何が考えられる? この閉鎖空間の中で部外者がモブ爺さんを殺したなんてことがあるわけないだろ お前は随分とおめでたい頭をしてるみたいだな」 明確な敵意‥‥こんな嫌味は私にだってわかる なにも知らない部外者だと言うのに ローラ「貴方に私の!!‥‥」 エマ「ローラ!!よかったぁ!」 ローラ「っ!え、エマ? ちょっと、いきなりどうしてたの?」 唐突に私に衝突するような勢いで来た彼女をやんわりと受け止めたこともあって言葉は言い終わることはなく止まってしまう 咄嗟に声を荒らげて彼に向かってしまったが その沸き上がるような怒りの気持ちはエマに話しかけられたこともあってすっかり治まってしまった エマ「だってぇ‥‥モブ爺が死んじゃってから皆怖いしローラならって思って‥」 その今にも泣きそうな声を聞いて自分でさえ怒りに飲まれてしまっていたことに罪悪感を感じる ローラ「そうね‥私まで大切なことを忘れていてごめんなさい。怖かったわよね、もう大丈夫よ 一緒にいましょう?」 顔に涙を浮かべ私を見上げるエマをぎゅっと抱きしめて「大丈夫よ、大丈夫。」と声をかけ続けた 私を優しくきゅっと抱きしめてくれるローラ その優しさはとても暖かい ふと私を包み込もうとする暗闇を退けてくれるかのようで しばらくして気持ちの高揚が治まってくるのを感じて 目を擦り ゆっくりと涙をふいてから エマ「うん‥離れないでね。 わたしも頑張るから」 彼女に向かって ただそれだけ呟いた この想いは届かなくてもいい だからね消えてしまわないで ずっと傍にいて 私の守りたい人 エマを落ち着かせるためにここまで話し込んでいる内にクリスさんは、もう私の側から離れてしまっていた 本当に何がしたいのだろう 敵意を振り撒いて、なんの利益があるだろうか 分からない‥でも、あの全てを射ぬくような冷たい目は、もう見たくもない エマ「ローラ‥大丈夫? 顔色悪いよ? なにかあったの?」 ローラ「大丈夫よエマ。 もし言うのだとしたら人の数だけ色々と起こるってことなの」 エマには悪い人はいないと、ずっと光を見せ続けてあげたい エマ「そうなの? ん~ ローラの言ってること私には難しくてよく分からない」 パッと一瞬にして咲いた眩しい笑顔に心が洗われてモヤモヤしていた気持ちが密やかなものに戻れた気がする ローラ「いいのよ‥きっといつか分かる」 わからない方がいいのかもしれない でも知っておけば負けずにすむ エマなら乗り越えられるだろうから
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