残された想いの向かう場所

7/17
前へ
/17ページ
次へ
‥‥エマと別れたものの、どうしても私の頭はずっと、もやもやしたままだった 私は今夜死んでしまったら‥エマを一緒に連れていってしまう それでいいと‥それがいいと望んでもらえた 私を受け入れてもらえた。 嬉しい‥とても嬉しいはずなのに苦しくてたまらない もし連れていってしまったら私を肯定してくれる人はこの世界に誰一人として居なくなってしまう ローラ「それで私は本当にいいのかしら 生きていてほしい、そう思うなら他の人を選んでもいいのに。怖いわ」 恐怖が離れてくれない エマ「ローラ!どうしたの?ずっと浮かない顔して‥部屋に入らない?」 はっとして横を見れば部屋に戻ったはずのエマが横で心配そうな眼差しを私に向けているのが見える 気づかなかった‥まさか今の言葉、聞かれてないわよね 人に話しかけられるまで分からないほど考えこむなんて思わなかった ローラ「エマ、心配してくれてありがとう でも、こんな夜更けにどうしたの?貴方は‥」 この先はどうしても口に出すのは憚られて言えずにそのまま黙ったものの エマは一体、なんだろう 聞いてはダメだっただろうか とぐるぐると行き場をなくした言葉が頭の中を回っていた エマ「えっと‥私? あのね。すっごい申し訳ないんだけど、怖くて‥眠れなかったの だから息抜きならいいかなって‥」 エマ「そ、そしたらローラが部屋の前に立ってて、しかも深刻そうな顔だったから話しかけたんだけど迷惑だったかな?」 笑いかけてくれたと思えば しょんぼりした顔 まさか私の深刻な話の渦中にいるなんて貴方は思ってもないのでしょうね でも、その方がいい。悲しむ顔なんて貴方には似合わないもの ローラ「迷惑?私はそんなこと言ってないわ 考えすぎるのも良くないでしょう? 怖いなら一緒に居ましょうよ‥中へどうぞエマ」 エマ「え?いいの? なんだか悪いよ やっぱり帰‥‥」 ローラ「私がエマと居られることを喜ばないと思ってるの? 大丈夫よ。そんなに心配しなくても 私は貴方の好意、忘れたことはないわ だから一緒に過ごしましょうよ」 ローラ「楽しい方がいいわ。今はとても苦しいけれど、だからこそ共にいてほしいの」 手を伸ばして迷っているエマが私の手を取ってくれるのを待つ 彼女は少し悩んでいたけれど、私の手を取ってくれる エマ「ありがと、怖いときは一緒 それが一番だよね。ローラの事、大好きだから ずっと傍にいたいの。だからお話しよ!」 よかった笑ってくれて エマには一番、笑顔が似合う。この時間が続けばいいのに 何もかも、このまま終わってしまえば幸せなままでいられる ローラ「嬉しいものね。決まったことだし 中でお茶会でもしましょうね さぁ、どうぞ」 私はドアを開けてエマを部屋に招き入れた エマ「お邪魔します。 すごーい想像通りだぁ やっぱり綺麗な部屋」 いつも、いつでも人が来ていいように綺麗にしている部屋の様子にも入ってすぐに気づいてくれる とは思わなかった なんて頭のいい子なんだろう 本当はあまりにエマも悲しい顔をしていたから 引き留めてしまったなんて今更言えないけれど 結果が良ければそれでいいわ ローラ「気に入ってくれてよかったわ 人を呼んでもいいように綺麗にしていたの エマ、今なにか飲み物を入れるとしたら何がいいかしら?あんまり物はないけれど」 客人をもてなすのは部屋の主がするべきこと 楽しんでもらわないといけない エマ「ローラ、ありがとう 気を遣わせちゃってたらごめんなさい 私は水で十分だよ。大丈夫」 遠慮‥ここではしなくてもいいと言いたい所だけれど‥それを追及するなんてできない 良い関係性のままでいるためなら ローラ「そう、遠慮させてしまったならごめんなさい。今、入れてくるわね」 少し離れた戸棚からグラスを取り出してレモンを絞って風味を効かせる ただの水よりは楽しみはあると思うのだけど 喜んでもらえるかしら 口元が少し緩みそうになるのを我慢して運ぶ ローラ「はい、お水。レモンを絞ってみて工夫はしてみたのだけどお味はどうかしら」 可愛らしいエマの顔を見ていたくて、そっと近くで眺める エマ「いただきます。 わぁ!美味しい。 酸っぱいと思ってたけど ふんわりしてて優しい味 まるでローラみたいだね。いつも誰かの事を見てくれている」 ローラ「それはエマにとってそう見えているだけ 私にとっては、それが当たり前として育てられてきている。だから優しいわけではないわ 今だって現に人を殺した 投票しただけでも、それは罪を犯したのと同じだわ でもね、私が誰かを殺せるかと問われたなら自分の命がかかっていたらきっと‥ そう、きっと非情になれるのだと思っているから‥怖いのよ」 自らの手を抱いて震えを押さえつけようとしても 恐怖は全てを壊してしまいそうなくらい私を蝕んでいる ずっとそうだった エマ「ローラ、大丈夫 大丈夫だよ。 それは貴方だけじゃない。皆そうよ、だから自分がおかしいのだと‥自分のせいだと背負い込まなくていいの」 ふわりと優しく包んでくれている感覚 あぁ、なんてエマは‥優しい子なんだろうか ローラ「ごめんなさい、ごめん‥なさい 私、私! なんでなのか胸が凄く痛くて。 どうしたらいいのか分からないの」 涙が止まらない。どうして、こんなはずじゃなかったのに こんなに弱かったら守るなんてまた夢の夢なのに 涙は止めどなく溢れて エマ「いいの、気がすむまで泣いていいの ずっと辛かったでしょう? 抱え込まなくていいんだよ」 ずっと我慢してたんだよね 大好きなローラ もう苦しまなくていいよ。私が傍にいる 貴方が辛くなくなるまで傍にいるから ローラ「ごめんなさい‥‥ごめんなさい、 ごめんなさい、‥ごめんなさい」 ここにはいない 何処にも存在していない罪の意識に謝り続けるローラの傍に寄り添い続ける ただ一人の私の大切な主のために とても繊細な人。だからこそ私が守りたいと思ったの どうかローラの苦しみが終わる日がきますように 私が寄り添い続けているローラは暖かい やっぱり人って暖かいのだと改めて思う とってもほんわかして なんだか眠くなっちゃうなぁ エマ「ふゎぁ‥ローラのことずっと守って‥」 ダメ‥眠ったら‥‥ ◆ ◆ ◆ エマ「あ‥れ?私、眠って? ローラ!!」 時間も忘れて守るべき人の姿を焦って探す どうして私ったら眠って もう!バカ。 ローラ「ん、んん。私‥なにも‥」 すぐ傍で小さな声が私には届く 私の大切な人 エマ「よかった‥ここに居てくれて。 ローラ起きてる?」 ローラを覗きこんで小さく囁いて見るとふと気づく また彼女の瞳は涙で濡れていて 泣いてなんてほしくないのに 私ではその涙を止めることができないんだね エマ「ローラ‥眠っててくれるよね? 起きてないよね? ちゃんと眠ってる? ‥‥そうだよね。こんな夜だもん、当たり前っか。ねぇローラ‥私は貴方を」 規則正しく微かに動く胸 綺麗な白い喉元。 静かに自らの持つ小さく鋭利な牙を決心がつけば、その命を奪える‥そんな所まで近づけて きっと命を奪われるかもしれないなんて思ってないよね ただ自らの非情さに怯えていたローラは とても優しい人だから もし私が誰かを殺す非情な選択を出来るかと問われたなら‥私は エマ「‥私には‥‥やっぱりできないや だって、ローラのこと好きなんだもん 誰よりも守りたい人。ごめんなさい」 ただ起こしてしまわぬようベッドから布団を持ってきてローラへかける 風邪をひいてしまっては大変だから 私は貴方を傷つける選択肢なんてとれない エマ「おやすみなさい‥ローラ」 パタリと静かに大切な人の部屋のドアを閉める
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加