第二章

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第二章

 真昼の帰ってきた日。  日付けが変わる時間まで語り合った。  もっともっと真昼と話したいことがあったが、  「子どもは寝る時間よ」  というオフクロの一言でお開きになった。  真昼の部屋は事故の日のまま真昼の部屋として置かれていた。  「いつ真昼が帰ってきてもいいようにね」  オフクロは口癖のようにそう言って、事故前と同じように毎日真昼の部屋を掃除していた。  「ほら、帰ってきたでしょ」  昨日、そう言いながら、オフクロは泣いていた。つられていつも怒ってばかりのオヤジまで涙を流した。  不幸が続くことはそんなに不幸だと思わない。一番の不幸は幸せだったのに突然その幸せが失われること。五年前のあの事故で真昼がいなくなったときのように。  今、真昼が帰ってきて久々に家の中が生き生きと活気づいた。これでもし、やっぱり間違いでしたと真昼が生き返ったのがナシになったら――。  オフクロとオヤジの受ける衝撃は計り知れない。期待させて裏切られる糠喜びほど残酷なものはない。そんなことになるくらいなら、真昼が死んだままでいてくれた方がずっとマシだ。  真昼は二度とおれたちの目の前から消えてはならなかった。そのためならどんな犠牲を払ってもいいとさえ思えた。真昼がこの世界にい続けるためにおまえの命を差し出せと神に言われたら、喜んで差し出す覚悟だ。  真昼がこれからずっとこの世界で存在し続けるために、おれにできることはあるか? さっぱり分からなかったが、とりあえず阿熊梓に会いに行くことにした。もうおまえらと口を利くことはないと宣言した次の日にのこのこ会いに行くのは気が引けるが仕方ない。  「先輩は自分からまたここに戻ってくるでしょう」  という島彩夏の予言どおりになるのもシャクだ。でも、真昼の命に比べたら、おれのちっぽけなプライドなんてなんの価値もない。  今日は期末テスト最終日。そういえばまたテスト勉強を一分もしなかったなと思い出しながら、おれはそわそわと解答用紙と向き合った。
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