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そうして40分ほど経っただろうか、小さく聞こえる放送が、借り物競争が始まると告げていた。見に来てねとは言われたものの、ここを空かすわけにもいかないし、動きたくとも動けない。いやいや、どうして見ること前提なんだ。そう一人で考えていると、
「さつきセンセ! 早く!」
「大神くん!? いや、先生はここにいなきゃ・・・」
「いいから! 俺ら負けちゃう!」
そう言って半ば強引に私の腕を引いて駆け出す大神くん。ああもう、私スリッパなんだけど!?というか、負けるっていうぐらいだから借り物競争のお題に私が関係しているってことだけど、養護教諭なら名護先生でいいじゃない。
あと、高校生、足早い・・・ついていくのがやっと・・・。そう文句を思いつつ笑っている私がいる。こういうのもいっか、青春っぽくて。そしてそのまま校庭まで引っ張られて、そのまま一着でゴール。笑って喜ぶ大神くん。
『さあ、赤団が一着でわが校のマドンナ、弥生先生を連れてきました! お題とは何だったのでしょうか!?お名前と一緒にどうぞ!』
と、放送委員の女の子がインタビューをし始める。確かに私も気になるところ。いや待て、マドンナって一体。
「3年2組、大神大我です! えっと、お題は【二人だけの秘密がある相手】です!」
『おおっと!? ということは、大神くんと弥生先生の間にはナニかがあると!? 気になりますね!? 教えていただけるなんてことは!?』
待って、雲行きが怪しくなってきたんだけれど!? ギャラリーもおおお!とどよめきだってるし、思わず大神くんを睨むけれど、当人はどこ吹く風である。まずい。保健室でウトウトしていたという恥ずかしいことを言われてしまう。そう思った矢先、
「いや~まあ、二人だけの秘密なんで、俺もバレたら困るから言えません!」
サラッと受け流す大神くん。そこで私も安心するけれどそれも一瞬で。
『残念~! じゃあ、弥生先生に聞いてみましょう!』
「ええっ、と・・・先生もなんのことかさっぱり・・・・・・」
はて、大神くんにとってバレたら困ることってあったかな? というかギャラリー男子たち、ブーイングの嵐はやめてくれ? 大神くんは不満げな顔で私にあっかんべーなんてして・・・って、
「ああ!」
『おおっと!? 思い出したようですよおおお?』
一気に盛り上がる歓声。青春キッズノリノリである。でも、
「秘密ですっ! べーっ」
こればっかりは、教えてあげられないんです。だって同じ、緑団ですから。
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