病棟を歩くひと

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 皮膚科部長の医師から蕁麻疹に効く薬を五錠飲むようにと指示が出て、看護師さんがみている前で全て飲み、看護師さんの手で膨疹(ぼうしん)にかゆみ止め軟膏を塗られ、あとはベッドに横になるように言われました。  夕食を食べ、この日のシャワーを見送り、就寝。  抗ヒスタミン薬は強い眠気を誘うので、私は朦朧(もうろう)としながら眠りに落ちていきました。  次に目が覚めると、消灯が過ぎた深夜一時になっていました。そこで尿意をもよおした私は、スリッパをはいてトイレに向かいました。  長い直線の廊下は東西に延び、私の部屋は西側の端っこに近い位置にあったので、中央部にあるフロアではここにしかないトイレに向かい歩きました。  トイレから奥の方にナースステーションがあり、そのすぐ傍にエレベーターがあります。ナースステーションは明かりが点いており、はっきりと人の気配がありました。  女子トイレは入り口から十歩ほど奥へ進むと、T字状に左右に広がり、左手に四つの個室があり、右手には洗濯場や尿瓶等が置かれている棚が並んでいます。  手前から二つ目の個室に入り用を足し終え、来た道を戻りました。パタパタという自分一人分の足音が、長い廊下に響いていました。  ベッドに入って目を閉じてから、どれぐらい時間が経ったのかわからない頃。  スタスタと歩く足音がこちらに近付いてきます。
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