黒髪

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 改札にスマフォを翳し通り過ぎるが間に合わなかったようだ。  ホームに降りる前に電車がガタンと動き出した。 『あそこですぐに見つかればなぁ』  通りゆく電車を見送り、次の電車を待つことにした。  夕日が落ちゆく黒くなったビルを眺め、プラットホームに佇む。  日中40度はあったのではないかという熱気と蒸した空気に包まれながらシャツを崩す。  汗が滴り落ち、僅かばかりの風が通り過ぎていく。  電車を待つ人の列が徐々に僕の後に長く連なっていく。  10分ほど待っていると、常磐線の電車が入ってきた。  左右に開閉する青い扉の横にあるボタンを押す。  プシューと扉が開き、篭った冷気が僕に当たり幾ばくかの涼風を享受する。
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