黒髪

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 それは静かに蠢いている。  ガタッ  電車が揺れるたびに、ゆらっと近寄ってくる。  この子は何処を通ってきたらこんなものに憑かれるのだろう?  現実とは夢を見るよりも想像を超えることがある。  僕にはそれを獲ってあげる僅かばかりの力があった。  でもこの黒髪に触らずにそれを獲るのは難しい。  蠢くものは黒髪をしっかと掴んでいる。  昨今、少し触れただけで痴漢だ、セクハラだと騒がれる世の中だ。
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