壱 高校デビュー、エリリカ!

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 野次馬を含めた見学者は、パイプ椅子を置いて、練習を見るように言われた。  真帆は、練習を見るというより、充を見ている。 「おおっ!」  体育館が、どよめいた。 「一年坊のくせに、ダンク決めやがった」  見学者の視線が、将人に集まった。 「見た、エリリン! スッゴいよね!」 「え? 真帆ちゃん、見てなかったでしょ?」 「は、はは。見てたわよ、見てた、見てた!」  ふうん、とエリリカは吐息を漏らした。 「あのゴールにぶら下がるのが、タンクって言うんだ。へぇー」 「タンクじゃなくて、ダンクだって!」  練習が、一瞬止まった。 「そこ! 見学するなら、静かにしてくれないか!」  少し小さめの選手がエリリカたちを睨んだ。 「すいません……」  真帆が肩をすくめて小さくなった。 (何、あの人、偉い人?) (キャプテンの中須藤(なかすどう)先輩よ。スッゴい厳しいんだって) (へぇー。怖そう)  練習は、淡々と進んだ。 (私さ、バスケ部のマネージャーになろうと思ってんの) (え? そうなんだ) (エリリン、どうする? 空手やるの?) (イヤよ。高校生になっても女番長とか言われるの) (じゃあ、バスケやりなよ。エリリン、運動神経抜群だからさ)  真帆がそう誘った、その時。 ー危ないっ!  流れ球が、エリリカの顔面を襲った。
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