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梅雨も明けたというのに降り続く雨。
ランチタイムの食堂は、ゼミや講義の終わった学生で賑わい、
席に着いた数人の学生に日生悟はいた。
「あれぇ? 日生、今日弁当じゃねーの?」
目ざとい学友達は、菓子パンのビニールを破る彼に言う。
大食いの悟が持参する弁当は、姉の手作りであり、
運よく相伴に預かったことのある彼らは、
物珍しく彼を見るのだった。
「…萌ちゃんも忙しいんだよ」
姉の名前を出してから、しまったと思った。
「もえちゃん? 姉さんをちゃん付け!?」
「双子の姉妹だからな?」
「マジかぁ。料理上手のお姉さん、いいよなぁ。オレもほしー」
「言っとくけど、もう一人は料理しねーぞ」
本当に双子かと思うほど若菜は、壊滅的に下手だ。
「えっ」
「えっ、じゃねーし」
黙々と食べる悟に不意に一人が言った。
「弁当なくて今日フキゲンなんか?」
「え?」
咀嚼する口が思わず、止まる。
そんなに態度に出ていただろうか…。
「バカ! 余計なこと言うな」
「わりっ!」
肘をぶつけ合う彼らに間を置いて、ちげーよと否定するも、
あながち違うとも言い切れなかった。
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