恋煩い

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絶好のデート日和というくらいどこまでも雲一つなく青い空が続く。 目的地は、知っているけど、その間にどこへ行くとかは聞いてなく…。 「今日いい天気だね」 「今日どこ行くの?」 「言えないよ。内緒」 「なんで?」 「だってやっぱデート楽しみにしていてほしいしさ」 眩しいからとつけたサングラスの奥が悪戯っぽく動く。 「サプライズってこと?」 「うん」 悟くんだって忙しいのに…考えてくれたんだ。嬉しいな。 そうだ。私も朝から準備してきたんだった。 「運転に疲れたら言ってね。サービスエリアで休憩しよ? 簡単に食べられるもの作ってきたし」 「えーマジ? 朝早かったのに作ってくれたの?」 「悟くんの好きなサーモンとクリームチーズのサンドイッチだよ」 「え、ホント? すっげー嬉しい」 こんな嬉しそうな顔、見せてくれるなら。 休み取るのに仕事、めちゃくちゃ頑張って良かったな。 旅行先は、都内から近すぎず遠すぎない距離になった。 私は事務仕事で体力ないし、悟くんは体力仕事で体を休ませるため、 歩くことをメインにのんびり観光しようって。 特に渋滞もなくスムーズに着いた先は、鎌倉。 定番と言えば定番かもしれないけどデートで来たのは初めて。 「早いね。もう着いちゃった」 「あっという間だったね」 「運転ありがとう。疲れてない?」 「大丈夫。俺、運転好きだし」 駐車場に車を駐めてドアを閉めると悟くんが助手席側に回ってくれてる。 そしてちょっと照れながら遠慮がちに言う。 「手、繋ぎたいんだけど… いいかな?」 えっとここは、照れるとこ? 「ずっとデートで彼女と手を繋ぐのが理想だったんだよね」 ぎゅん…!(心の悶え) …かっ、かわ、可愛い。 「里佳?」 「う、…うん。繋ご」 可愛すぎて鼻血出るかと思った。 そう言えばつきあっていても今まで外に行くと言ったら、 買い出しでこんなふうに出かけたりとかなかったなぁ…。 悟くんがこんな可愛いこと思ってくれているのに対して私ってば、 一緒に行ったスーパーで姉弟に見られることに勝手にしょげたりしてた。 恋人には見られないんだなぁって…。 「なんか…新鮮だね」 「こういうデートもいいよね」 生活圏を離れて開放感に包まれる私達は、 付き合い始めたカップルみたいな会話をしながら、 小町通りでランチをすませ、英勝寺、鶴岡八幡宮を歩いて、 最後に由比ヶ浜海岸へやってきた。
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