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ヴァフィラは、花瓶に活けられたオレンジ色のバラを見た。
父の顔も、母の顔も知らない私。
そんな私に、本当の父親のように、そしてある時は本当の母親のように、いや父以上に母以上に愛情を持って接してくれていたニコルス先生。
バラの輪郭が、ぼんやりと滲んでゆく。
ぽろり、と大粒の涙がヴァフィラの瞳からこぼれた。
ルドーニの大きな手が伸びてきて、その涙をそっとぬぐっていった。
「俺を、家族の一員に加えてくれ、ヴァフィラ。ニコルスの代わりになんかなれねえ事は解ってる。でも、俺は俺なりに、お前を幸せにしたい。苦しいこと一人で抱え込まないで、俺にも背負わせてくれ。頼む」
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